再発見 日本の哲学 埴谷雄高――夢みるカント
【重要】
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■商品説明
「自同律の不快」って、いったい何だ!? 難解であることで有名な小説『死霊』の哲学を、しなやかな文章で、明解に解きほぐす快著が、待望の文庫化。「再発見 日本の哲学」の一冊であり、埴谷雄高の世界があざやかに分かる一冊。
埴谷雄高は、『死霊』という難解なことで有名な小説の作者として知られています。一方で、『死霊』は、みごとな情景描写もちりばめられた、きわめて魅力的な小説でもあります。
埴谷の有名な言葉に「自同律の不快」があります。埴谷の哲学を象徴する言葉と言っていいでしょう。では、これは、いったいどういう意味なのか。そして、小説の形で表現された、埴谷の哲学とは、どのようなものなのか。
伝記的な事実を持ち出せば、戦前の日本共産党の非合法活動に参加し、逮捕されたあと、未決囚の独房の中で、天野貞祐訳、カント『純粋理性批判』と出会います。そこから、埴谷は、終生、哲学的思索を続けるわけです。
本書は、自身、カント『純粋理性批判』をはじめとするいわゆる「三批判書」のきわめて優れた翻訳を世に問うた哲学者による、渾身の埴谷雄高論です。『死霊』によりそいながら、「私はほんとうに私なのか」という埴谷の「存在の哲学」を読み解き、戦後日本を代表する哲学的思索の全貌を、端正な文体で明らかにする力作です。
*本書の原本は、菅野覚明・熊野純彦責任編集「再発見 日本の哲学」の一冊として、2010年、小社より刊行されました。
【目次】
序章 存在の不快 ―《霧》―
一 途絶
二 情死
三 泣き声
第一章 宇宙的気配 ―《夜》―
一 原型
二 感覚
三 背景
四 虚体(一)
第二章 叛逆と逸脱 ―《闇》―
一 経験
二 一匹狼
三 叛逆型
四 逸脱
五 臨死
第三章 存在と倫理 ―《夢》―
一 死者
二 存在
三 根源悪
四 深淵
五 希望
六 虚体(二)
■著者
【熊野 純彦著】
1958年生まれ。東京大学人文科学研究科博士課程修了。現在、東京大学教授。専攻は、哲学、倫理学。主な著書に、『レヴィナス』(岩波書店)、『西洋哲学史』(岩波新書)、『ヘーゲル』(筑摩書房)、『マルクス資本論の思考』(せりか書房)など。また、訳書にカント『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』(作品社)、ハイデガー『存在と時間』(岩波文庫)などがある。

